モデル解説
『十勝鱒竿』はトルクフルでスピーディーなアクションを基本にした、いわば”トカチ・プログレッシブ・ドライアクション”をすべてのモデルのための基本アクションにしています。トカチ・プログレッシブ・ドライアクションとは、優れた戻り性能を発揮するプログレッシブ・アクションであることに加え、少ない負荷でも程よくバットセクションにライン加重を伝達し、ロッド全体でスピーディーなトルクを生み出し、それによってラインスピードの速いキャスティングを可能にするアクションを目指しています。同番手のロッドで長さの異なるスペックを比較すると短いロッドがよりスピーディーになります。また、ロッドテーパーとの一体化を実現する自作フェルールを使用することで軽量化を達成しつつ、3ピースでのラインナップにより、携行性も大変優れています。各番手のロッドの特徴を次にご案内させて頂きます。
3番 Pirika (ピリカ) シリーズ 7'3",7'6",7'9",8'0" の4モデル
当工房の近くには湧水の細流が数多く流れています。大げさにスプリングクリークというほどではないですがいつも澄んだ流れが牧場や畑地を縫って流れています。そこに生息する小型のブラウントラウト(アベレージ20〜30 センチ)は、まさに宝石のような美しさです。さらに少し上流の支流域では、晴れた日中にドライフライでオショロコマ(20〜30センチ)の陽気な釣りを楽しむことができます。そんな楽しい釣りを対象としたロッドがこのシリーズです。
DT3Fラインに6Xティペットを使い、ロッドにフルテンションをかけた状態での鱒とのファイトでも、流れに乗った鱒の抵抗にも、のされてティペット切れを起こすことのないアクションを目指しています。他のモデルよりも細身のティップを組み合わせたプログレッシブな特性と、スウェルバットの生み出す粘りのあるパワーで極ショートからミドルレンジまでのキャスティングで軽快な打ち返しができる性能に照準を定めています。高番手の開発でつちかったノウハウをつぎ込み、テーパーを絞り込んだ細身のブランクからは想像できないシャキッ!とした(歯切れ)良さによって、キャスティング時の高いレスポンスを実現しています。
4番 Makiri (マキリ) シリーズ 7'6",7'9",8'0" の3モデル
少し住宅が少なくなったあたりにはほどよい川幅の流れがきれいな虹鱒を育んでいます。ちょっと河畔林が茂った大きなカーブには倒木も重なり少々難しいポイントを形成しています。そんな深みから飛び出す魚は、時には40センチを超えフッキングすればジャンプをくり返し元気いっぱいのファイトをしてくれます。中流域でのフラットな流れでの釣りがそのようなうれしい釣りを味わわせてくれるのです。そんな釣りを対象にしたロッドがこのシリーズになります。
DT4Fラインで5Xティペットを使い近距離での大型ドライのキャストさえ、他モデルよりも僅かに細いティップと組み合わせたこのモデルのトルクフルなドライアクションは、難なくこなします。スウェルバットによりバット・パワーを充分確保し、中型魚への対応と同時にキャスティングの打ち返し性能を高めています。また、本流など常用キャスティングレンジが広い場合や長いドリフトによる送り込みが必要な場合は、WF4Fを使用することも可能です。
5番 Shumari (シュマリ) シリーズ 7'9",8'0",8'3",8'6" の4モデル
日本一清冽な流れを有する十勝エリアの中流域では、広々と開けた河原とそこを蛇行する分厚い流れにトロフィーレインボーを秘めています。大きなドライフライを思いっきり気兼ねなくキャストすると、流心から大きな影が浮上してきます。しかしヒットまで持ち込むにはほんの一瞬のナチュラルドリフトが欠かせません。それができれば確実に魚はラインの先に!しかしそれからが本当の戦いになります。また時には重いニンフを底に転がす釣りが要求されます。まさにニュージーランドのニンフメソッドの釣りです。そんな本気の釣りを味あわせてくれる釣り場を対象にしたのがこのシリーズです。
DT5FかWF5Fに4Xティペットを使い50センチ前後の鱒をコントロールする。さらに大型フライも容易にターンさせる分厚いトルクと、滑らかかつ十分なパンチを持ったロッドを実現するために、トカチ・プログレッシブ・ドライアクションを基本にしてさらにミドルに僅かにパワーを持たせています。このロッド一本でドライからニンフまでオールラウンドに対応することが可能になっています。まず最初の一本を選ぶならこのシュマリをお勧めします。
6番 Tomuraushi (トムラウシ) シリーズ 8'0", 8'3", 8'6", 8'9", 9'0"の5モデル
目の前でライズをくり返す60、70センチのレインボー。十勝には70センチを超えるレインボーをドライフライで仕留める釣り場がいくつも存在します。複雑に流れの筋が交差し、そこを流れるフォームラインにそってトロフィーが定位します。流れは絶えず移動し同時に魚も移動し、キャスティングレンジに入ったらすぐさまフルラインのプレゼンテーションが必要になります。そしてフライは4番のサーモンフックにまかれたシケーダー、結ぶリーダーは2X、ティペットは3X。はたまた5Xに落として18番のフライングアント。複雑な流れをクリアするためには長めのリーダーを結びます。勿論、ヒットさせた巨鱒のパワーは想像をはるかに超えるものです。まさに戦いといっていいほどのファイトに耐えなくてはなりません。このような魚たちの存在によって開発をよぎなくされたともいえるのがこのシリーズ、トムラウシです。この、竹竿の限界ともいえる性能を生み出すことは『十勝鱒竿』にとってまさに挑戦でした。ドライフライによる巨鱒との出会い、さらにそれに勝利しうるためのロッドです。
WF6Fラインに3X、4Xティペットを基準にし、至近距離からフルライン・レンジまで広くカバーするロッドです。ロングロッドにおいても軽快な振り心地を確保し、大型フライやウエイテッドニンフを正確にポイントに打ち込む高いアキュラシー性能に加え、60センチオーバーのレインボーとのやり取りもロッド全体でいなすことが可能なパワーを備え、正に十勝鱒竿のフラッグシップモデルと呼ぶにふさわしいロッドです。
北海道の先住民族アイヌの文化に敬意を表してモデル名に称しました。
Pirika:ピリカはアイヌ語で『美しい』を意味します。
Makiri:マキリはアイヌ語で『小刀』を意味します。
Shumari:シュマリはアイヌ語で『狐』を意味します。
Tomuraushi:トムラウシはアイヌ語で『水垢の多い川』を意味します。