設計思想

『十勝鱒竿』は、十勝に生息する息をのむようなワイルドレインボーを対象として、これまでに数多くのフィールドでテストを重ねながら、竹竿に必要とされる機能と性能を追い求めてきました。

釣りに際して竿に求められる所作とはキャスティング、ライン・コントロール、フッキング、ファイティング、ランディングですが、そのフィールドテストから、これらすべての動作に必要な一つの共通点を見つけ出すことができました。それは竿の『戻り』ということです。
この戻りこそが竿に求められる第一の性能であり、『十勝鱒竿』の設計においてはこの戻りの調子(アクション)を産み出す事にその製作過程の全工程が集約されることになりました。

つまり、以前の竿造りの全工程を根本から洗い直し、スピーディーにトルクフルに戻るにはどうすればよいかということを追求してきました。

この最適な戻りを実現するためには、いくつかの相互に関連する製作上の重要点をクリアーする必要があります。

その1 : ゆがみのない平面
理想のアクションを実現するべく意図されたテーパーデザインをロッド上に正確に実現させるために、ブランク面にゆがみの無い正確な平面を作り出すこと。このことに最大の注意をはらいます。この平面が連続していくことこそがロッドテーパーの実体であり、アクションそのものを生み出します。

その2 : 中空構造
中空構造も竿の戻りに大きく影響を与えます。ライン番手やセクションのちがいにより、部分的または連続的にブランクの肉厚に変化をつけていき、テーパーだけによらない質量と硬さの変化を与えることで戻りの復元力(反発力)を高めることができます。

その3 : 火入れ
竹本来がもつ戻りを最大限に引き出す要素のひとつです。要求されるアクションに応じた反発力を引き出すため、竿が完成するまでに火入れは合計三度行います。 一度目は、丸竹状態でのトーチによるフレーミングで。二度目は、荒削り後にオーブンで。 最後は、六本のスプリットを接着したそのあとオーブンで。
どの場合でも室内の温度・湿度を徹底管理し、極限までに竹をねじ伏せ(懲らしめ)直進性・平面性を獲得します。

その4 : フェルール
既製品を使わずに、各ロッドテーパーに合わせて最適なサイズのフェルールを自製することで、各モデルごとに理想のフェルール構成が可能になり、同時に強度を保ちながら無駄を削いだ軽量化が可能になり、『十勝鱒竿』が追求する3ピースロッドでも理想の戻りを実現しました。

これらの要点を一つ一つ生真面目に詰めていくことで、『十勝鱒竿』は秀でたキャスティング・レスポンスと、より高次元のフィッシング性能を獲得することができたのです。

さらに、『十勝鱒竿』は手にとって愛でる道具としてなくてはならないロッド自体の美しさを、緻密なラッピング、深みのあるバーニッシュなどによって充分確保されています。しかし表面的な美しさだけではなく、本来の竿のプロテクト機能も申し分ありません。優雅さと堅牢さ、すなわち機能が生み出す美しさを追求しています。

現在はグラファイトロッドが主流の時代、だからこそ、あえて竹の限界に挑み新たな可能性を引き出そうと取り組んでいます。 そしてことがゲーム・フィッシングの幅をより広くしてくれるよう心から願っています。

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